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永田珈琲倶楽部・掲載

・ ポケットカンパニー ・


実業の日本社

1997年4月8日


こだわりをインターネットに載せて
蘇生する喫茶店




↓掲載内容一部分です。

 世の中にコーヒー通を自任する人は数多い。
しかし「本当のコーヒー」を飲んでいる人が一体何人いるだろうか。そう思ったのは、西武線小平駅周辺に五軒の喫茶店を経営し、焙煎工房も持つ永田政弘さんに会ったからである。
 通でなくとも、コーヒーが植物であり、湿気や空気に触れることを嫌うという認識ぐらいは持っているだろう。だが、永田さんの「コーヒーは生鮮食品ですよ」という一言から始まるコーヒー論を聞くと、カルチャーショックを味わう。
コーヒーは生鮮食品ではあるが、魚や肉のように劣化が激しくはない。だから製造されてから何カ月も、ときには何年もたったコーヒーを平気で飲んでいる。普通の生鮮食品ならとっくに腐っているはずだが、劣化が緩やかなので、気が付かないだけなのだ。

10年のデータを組み合わせて焙煎マニュアルを完成

 永田さんの店で豆を買うと、一目で市販のものとは違うことがわかる。
 袋がゴムマリのように膨らんでいるのだ。袋の中でコーヒー豆が呼吸をし、膨張しようとしているためである。
 市販の豆ではこういうことは絶対に起こらない。新鮮な豆を缶に密封してしまっては爆発することにもなるから、膨張が収まった段階、つまりかなり劣化するのを待って袋や缶に詰めるからである。
大量に出荷しようとすれば、商品の状態が最良ではないことを承知で出荷せざるをえないのは理解できる。だが、極端なことをいえば、くさやでもあるまいに、腐っていることを承知で、あの手この手を使って売っているのである。 同じ産地の豆でも、入荷する時期によって、豆の性質がまったく異なることがあるという。
一方、焙煎するときの天候も千差万別なのに、大量生産では全部一緒くたに製造してしまう。また、永田さんは豆の表情を読み取り、その日の天候を配慮しながら、焙煎し、直前に挽く。そういう焙煎技術は長らくカンの世界で、他人には伝えられない性質のものだった。永田さんは10年かけて、産地別、豆種別、入荷時別、焙煎時天候別などなど、あらゆるデータを組み合わせたマニュアルも完成させた。
 五つの店はいずれも工場から歩いて数分というところだから、どこで飲むコーヒーも香り高く、澄み渡っておいしい。
安さを売り物にしているコーヒーショップとは完全に住み分けができている。

続く・・・・・・・・・・・・・・・・・
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